今日は田町サロンで渡瀬英彦さんと大宅 裕による
朗読とピアノ、フルートとピアノによるリヒャルト・シュトラウスが開催されました!
渡瀬さんはフルート奏者なのですが
今回は志向を変えてピアノの伴奏に合わせて朗読をされるという初の試み。
今回のアーティストをご紹介!
渡瀬英彦(フルート/ナレーター)
国立音楽大学器楽科卒業時に矢田部賞受賞。
トレバー・ワイTHE STUDIOを修了。2年間ベルギー王立音楽院に在籍。
クラシック音楽の 枠にとらわれないパフォーマンスで魅了。
大宅 裕(ピアノ)
桐朋学園大学音楽部ピアノ専攻卒業。
ベルギー王立アントワープ音楽院にて室内画久野最高学位を修了。
鋭敏かつ繊細なタッチから 導かれる多彩な音色、強固な音楽構築に定評。
それでは渡瀬さんから今回の趣旨を説明していただきます。
ヴァイオリン・ソナタより第2楽章をフルートとピアノでの演奏から始まります。
続いて渡瀬さんによる朗読です。
今回朗読された作品はイノックアーデン。
ビクトリア朝時代を代表するイギリスの詩人テニスンによるこちらの物語は
彼が55歳のときに作られたものです。
イノックアーデンについてご紹介しましょう。
幼なじみで遊び仲間の3人の子どもがいました。
船頭の息子で親を亡くしたイノック・アーデン、美少女アニイ・リイ、
粉屋の一人息子フィリップ・レイ。
イノックもフィリップもアニイに恋こがれていましたが、
やがてたくましい漁師に成長したイノックが、アニイに求婚。
二人は結婚して3人の子どもにめぐまれ、幸せな家庭を築きました。
しかし、イノックがケガをしたことで家計が苦しくなり、
イノックは妻子に楽をさせたいと、アニイが引き止めるのも聞かず、
東洋貿易の船に乗りこみました。
つつがなく船旅を続けましたが、帰る途中暴風雨にあって船は沈没、
イノックは常夏の無人島に取り残されてしまいました。
故郷の妻子を夢見ながら、たった一人で暮らすこと10年あまり。
ある日、運よく通りかかった船にすくわれ、港についたイノックは、
ひたすら我が家へ急ぎました。
ところが、住み慣れた家は、売家の札がかかっているのです。
居酒屋のおばあさんは、イノックとは気づかず、アニイの話をするのでした。
イノックがいなくなってから、生まれたばかりの赤ちゃんが死んだこと、
悲しむアニイをフィリップがなぐさめ、
さらにアニイの苦しい暮らしも支えてあげた上、
子どもたちを学校にかよわせたこと。
10年経ってもイノックからの音信がとだえたためアニイは、
イノックは死んだものとあきらめて、
フィリップの求婚を受け入れたこと、そして子どもも生まれたことなどを。
ある日の夕暮れ、イノックはこっそりフィリップの家を訪ねました。
赤々と燃える暖炉のまわりで、楽しげにくつろぐアニイや
子どもたちの姿をぬすみ見したイノックは、苦しみに荒野にのがれ、
「妻子に帰国したことを知らせずに生きていける強い心を授けてほしい」
と、神に祈るのでした……
イノックが一人で暮らす南海の孤島の明るさ、
それと対照的なイノックの望郷の思いの描写は、
特に優れているといわれています。
夏目漱石 は「イノック・アーデンが孤島に打ち上げられた時の有様を、
テニスンは斯う書いてゐる。ここに人間がある。
活きた人間がある。感覚のある情緒のある人間がある。
是から見るとロビンソン・クルーソーの如きは山羊を食ふ事や、
椅子を作ること許り考へている」と評しています。
朗読の最後はMorgen!で幕を閉じます。
田町サロン初めての試みでしたが
ピアノに合わせた朗読もなかなかいいものですね♪